はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
だけど、触れる手を離さない。


「だったら、俺のことを嫌いと言って」

「もう好きではありません」

「違う。嫌いと言いなよ」

「同じ意味ですよ。もう好きじゃないです」

「目を逸らさないで」


真っ直ぐと見つめる瞳に心が痛くなり、目を下に向けていた。真っ直ぐ見れない。

『嫌い』と言えば、納得してくれそうなのに言えない。

この期に及んで、言えない自分に腹が立つが、『嫌い』と言うことで彼との幸せだった時間が偽りになってしまいそうで、言えない。

幸せだった時間を大切にしたい。


「藍果。嫌いなら叩いて」

「えっ?」

叩く?

意味が分からなく困惑して玲司さんを見ると、彼は私の顎をあげて、自分の顔を近づけてきた。

どこを叩けばいいのかと考える時間もなく、玲司さんの唇が私の唇に触れる。優しく温かい唇に触れられて、私の体は熱くなる。

嫌いじゃない。大好きな唇で、大好きなキスだ。叩けるわけがない。叩くどころか離れることもしないで、彼の熱を受け止めた。

侵入してきた舌に自分から絡ませて、『好き』をいくつも思い浮かべる。
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