はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
姿勢よくしてゲストにお辞儀する姿、優しく微笑んで話す姿、真っ直ぐと私を見つめる瞳、優しく私に触れる唇、力強い腕。『好き』な部分ならどんどん浮かんでくる。嫌いな部分は何もない。

こんなに好きで溢れているのに、嫌いなんて言えるわけがない。


「叩かないの?」

「嫌いになれない。……何でこんなに好きになっちゃったんだろう」


本心がつい口から出てしまい、慌てて口を押さえるが、玲司さんの耳にはしっかりと届いていた。

彼は優しく私の頭を撫でて、笑う。


「なに言っているの? 俺のほうがずっと想ってるから。藍果が好きじゃないという顔だって、必死で拒否する顔だって、泣く顔だって愛しくなるよ」

「えっ、そんな顔まで?」

「もちろん最高に好きなのは笑顔だけどね。無理して嫌いにならないで。自分の気持ちを偽らないで。大丈夫だから。どんなことがあろうと藍果を離さない」


玲司さんの優しく力強い言葉に私は自分から抱きついた。


「素直な藍果、かわいいね」

優しく抱きしめ返してくれた玲司さんを私は彼の腕の中から見上げる。近付く好きな顔を見ながら、目を閉じた。
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