はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
「横川さん」と呼ばれて振り向く。


「昨日はありがとう。助かったよ。これ、お礼。あ、もしかしてこれから資料室行くの?」

「いえ、ついでだったのでお気になさらず。わざわざありがとうございます。はい、申し訳ありませんが、私の机に置いてもらってもいいですか?」

「うん、了解」


昨日30分だけ残業をして帰ろうとしていたところに、販売課の片瀬さんから頼まれた。速達の郵便物を郵便局の時間外窓口で出して欲しいと。

郵便局は最寄り駅を通りすぎたところにあるから、仕事帰りに時間をかけてもらうから申し訳ないと謝られながらもお願いされた。

昨日は帰りに玲司さんのマンションに行く予定になっていて、郵便局の前を通っていくから問題はなにもなかった。

玲司さんのマンションに行くから大丈夫とは言えなかったが、快く引き受けた。

ついでだから、気にすることでもなかったのに、律儀な人だ。さすが彩音が好きになった人だけある。

あ、今は好きな人ではなく、もう恋人だ。片瀬さんと彩音は先週から交際を始めている。彩音から報告されたときは自分のことのように喜んだ。

でも、二人のことは私と玲司さんしか多分知らない。うちの会社は社内恋愛禁止ではないから、隠す必要はない。
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