はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
業務中にプライベートな話は出来ないのは承知しているが、後ろ髪引かれる思いで目は彼を追ってしまった。

業務以外の時間で話せるときはないかな。


「横川さん」

「はい」

「説明の続きをしてもいいかな?」

「はい。あ、すみません……」


支配人の方を見ていた私は名前を呼ばれて、今置かれている状況を思い出した。

いけない、何しているんだろう。今は余計なことを考えないで、しっかりと覚えるべきことを覚えなければいけないのに。

気を引き締めるよう大沢チーフみたいに背筋を真っ直ぐ伸ばした。そんな私を大沢チーフは微かに笑って、説明を再開させる。

厳しそうな人に見えたけど、意外に優しいかもしれない。

今日はマニュアルをもとに、業務の流れやトラブルがあったときの対処法などを学んだ。明日から早々と実践するが、早番と遅番に分かれるため、彩音とは別の時間になった。

どちらの時間も経験するように、三日経ったら交代となる。


「まず藍果は遅番だから、朝ゆっくり出来ていいね」

「そうだけど、出勤が14時だとそれまで何していいか分からなくて、困る」
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