はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
どこか休憩室のような場所あるのかな。教えてもらっていないけど、誰かに聞いてみよう。行ったら、誰か聞ける人はいるだろう。

と、呑気に考えて出ていったが……。


「あれ? 君、新入社員の子だよね?」

「はい? あ、お、おはようございます。あ、いえ、お疲れ様です」

「そんなに恐縮しなくても。これから出勤ならおはようございますで合っているよ」


よし行こうと足を踏み出そうとしたとき、横から声がかかった。そこにいたのは人事部長とまさかの支配人。

思いがけず現れた人物に恐縮するなとは無理な話だ。

人事部長は狼狽する私を笑いながらも優しく教えてくれた。しかし、人事部長よりも気になるのは支配人で彼も同じように笑っていた。


「確か昨日からフロント研修だったよね?」

「はい、そうです。あの……」

「ん?」

「もしかして、覚えてくれているんでしょうか?」


昨日、簡単な挨拶しかしていないのに、覚えてくれているのが嬉しくなった。


「ああ、人の顔と名前を覚えるのは得意なんだよね。横川藍果さん」

「フルネームでしっかり覚えているとはさすがですねー。私は下の名前まで覚えていないですよ」


私だけでなく人事部長までもが感心する。
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