はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
不審者に聞くように訝しげな顔をしている。エレベーターが降りてくる表示をちらりと見てから、答える。


「友だちと上の中華を食べる予定なんです」

「あー、そうなんだね。美味しいから、ゆっくり楽しんでください」

「はい、ありがとうございます」


ちょうどエレベーターのドアが開いたので、軽く会釈して乗り込んだ。

支配人と一緒に外に出るのもロビーを通らなければならない。また大沢チーフに呼び止められてしまうかもしれないが、それよりもふたりで出ていくのを他のスタッフに見られるのは困る。

根も葉もない噂になったら、支配人に迷惑がかかる。誰にも知られずに外に出る方法はないだろうか。

ロビー階ではなく、地下駐車場まで行ったらどうかな。

良い解決方法が思い付かないうちに支配人室のある10階に止まった。以前の支配人室は1階にあったらしいが、この階の一番奥にある客室を改装して今の支配人室にしたのだと原田さんが教えてくれた。

なぜ10階にしたのかは分からないそうだが。ロックをするとドアが開かれる。


「どうぞ」

「はい、失礼します」
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