はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
話をしてもいいですか?
スイートルームの清掃はまだしたことがなかったので、ここに入るのは初めてだった。もしかして、清掃方法をレクチャーするために来たとか?

食事はそのあとかもしれない。

しかし、掃除のために来たのではなかった。


「横川さん、おいで。ここに座っていて」

「ここですか?」


支配人は私を手招きして、ダイニングテーブルの椅子のひとつを引いて、そこに座るよう促した。

私は言われるまま動いて、腰を下ろした。支配人は上着を脱いで、ネクタイを緩める。それから、上着をハンガーに掛けに行ったのか隣の部屋に消えた。

多分隣の部屋はベッドルーム。

すぐに支配人が戻ってくると、インターホンが鳴った。スイートルームだけに設置されているカメラ付きのインターホンで、もちろんそれを見るのも初めてだから、私はカメラを興味深く見た。

支配人が応答して、ドアを開けると銀色のカートを押して男性スタッフが入ってきた。レストランのスタッフだろうけど、まだレストランのスタッフとは顔を合わせていないから、初めて見る人だった。
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