はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
「ん? 目を閉じたのは? どうして目を閉じたの? 教えて」

「えっと、あの、なんとなくです」


答えにならない答え。これ以上言えることはない。

支配人は吹き出し笑いをした。よく見ると、支配人もほんのり頬が赤くなっている。多分彼の方が飲んでいた。

少々意地悪なことを聞くのは、酔っているから?


「なんとなくね。でも、真実の答えがなんとなく分かったよ」

「え、本当ですか?」


なんとなくでなんとなく通じてしまうものなの?

そんなに分かりやすかったら、恥ずかしい。


「おでこを合わせるんじゃなくて、口を合わせるかと思ったでしょ?」


ズバリの答えに私の顔は沸騰。恥ずかしすぎて、目を逸らす。

しかし、支配人はそんな私の顔を両手で包み込み、自分の方へと向かせる。またもや予想外のことに私は動きを止めて、ただ彼だけを見つめる。

どうしたらいいのか分からなくて、心臓は壊れそうなくらい動きが速くなっている。


「そう、ちゃんとこっちを見て。赤くなる横川さん、かわいくて食べたくなるよね」

「え、食べっ……」

「でも、セクハラだとあとで訴えられたら困るしね」


彼はまたもや顔を近付けたけど、今度は鼻と鼻が微かに触れ合った。
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