はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
私から離れた支配人は顔を上に向けて、額に手を当てる。なんだか困っているポーズだ。


「やばいな、俺も酔っているのかも。外を歩けば、酔いもさめるかな」

「外ですか?」

「うん。横川さんは本当に眠そうだから、ここで寝ていいよ。明日は休みでしょ? 俺は帰るね」

「ええっ、帰られるんですか?」


帰るのは私の方だと思っていた。この部屋を予約したのは支配人で、私は食事のためだけに呼ばれたのだから、終わったら帰るつもりでいた。

眠くなって、少し寝てしまったけど、まだ電車も動いているから難なく帰れる。

でも、終電まではここにいたいなと思っていたから……。


「そんなにガッカリした顔されると、まだいたくなるけど、理性を保てる自信がないんだよ。だから外の風にあたって、頭を冷やしながら帰るね」

「歩いて帰れる距離なんですか?」

「うん、ちょっと来て」


呼ばれて、並んで大きな窓から外を見る。最上階から見る夜景は宝箱みたいにきれいで、見れることが贅沢。


「本当にきれいですね」

「うん、そうだね。じゃなくて、ここよりも高いあのマンション。あそこに住んでいる」
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