はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
出ていかれたら、もう止められないし、追うことも出来ない。

スイートルームで寝れる機会なんて二度とないかもしれない。まずはシャワーを浴びてこよう。

早々と気持ちを切り替えた私は、下着以外の服を脱いでハンガーにかけようとした。

スカートを手にして、ベッドルームへと体を向けたとき、背後からピッという電子音がして、ドアが開かれた。

ハッと振り向くと、そこにいたのは支配人。彼は私の下着姿に一瞬目を見開いた。


「あ、ごめん。忘れ物しちゃって」

「え……、忘れ物?」

「そう、これ。大切なものだからね」


支配人はダイニングテーブルに置いたままだった写真二枚のうちの一枚を手帳に戻した。


「じゃ、おじゃまして悪かったね」


私の格好には何も触れず、片手をあげて再度出ていく。もしや、彼の目にはちゃんと服を着ているように見えた?

ううん、そんなはずはない。やっぱり、ほら、服着てないよ。


「キャア!」


改めて自分の姿を確認して、両手で胸の辺りを隠し、小さな悲鳴をあげた。

自分しかいない部屋で今さら遅いのだが……。
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