はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
私とは想いが全然違う。私は、彩音ほど人を好きになったことがない。今一番気になっているのは支配人だけど、彼と恋愛出来ない気がする。

食べ終えたランチプレートが片付けられて、食後にと頼んだアイスティーが置かれた。

彩音はミルクを入れて、かき混ぜていた手を止める。視線は外に向いていた。


「あ、支配人」

「えっ? 本当だ」

「今から出勤なのかな?」


目の前の道を支配人が歩いてくる。長身でスラッとしたスタイルの彼は目立つし、姿勢よく歩く姿もきれいだ。

彼はカフェの前で足を止めた。私たちの姿に気付いたようだ。


「お疲れ様です」と彩音が頭を下げる。ガラス越しだから、声は届かないけれどつい出てしまったのだろう。

私も同じように頭を下げた。すると、彼はカフェの入り口に体を向けて、中に入ってきた。


「うわっ、支配人来たよ」

「う、うん」


動揺する私たちの前に支配人はやって来て、柔らかな笑顔を見せる。


「お疲れ様」

「お疲れ様です!」


彩音が立ち上がるから、私もと立とうとしたが、支配人に肩を軽く押さえられる。
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