はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
「立たなくていいから。仲村さんも座って。俺も座っていいかな?」

「はい、どうぞ」

「ありがとう」


私の隣に座ろうとするから、体を窓際に寄せた。座るとは思いもしなかったが、そっと支配人の横顔を見る。

こんなところでのんびりしていいのかと心配になるけれど、隣に座ってくれたことで心は弾んだ。


「時間は大丈夫ですか?」

「ああ、午後一時からだからまだ大丈夫」

「えっ、もう十五分前ですよ?」

「ん? ああ、本当だ。そうか、出る前に電話が掛かってきたから、時間がずれたんだな」


家を出てから今まで時間を確認していなかったようで、今腕時計で確認していた。呑気な感じがするけど、支配人が住むマンションからホテルまでは近いから時計をを見なかったのかもしれない。


「急いで行った方がいいですよね?」

「うん。残念だけど、行くね。横川さん、またね」

「はい……お疲れ様……です」


ここからは五分あれば着くから間に合うだろう。

支配人が席を立つと、すぐ彩音が前のめりになった。


「ちょっと! 何で藍果にだけ、またねって言ったの? なんか意味深に聞こえたんだけど」
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