はずむ恋~見つめて、触れて、ときめく~
やっぱり聞かれると思った。私も同じように思った。だから唖然として、返す言葉が途切れ途切れになってしまった。

なぜ私にだけ?


「分からない。私も知りたい」

「は? 分からないの? 心当たりないの?」

「あると言えば、あるような」

「あるなら、話して」


さっきまで落ち込んでいた彩音はどこに行ったのか、今は意気揚々しているように見える。

そんなにも興味あるのかな。


「さっき偶然会った人がいるって、話したでしょ?」

「うん、七年ぶりだっけ? え、まさか、それが支配人だったの?」


彩音は気遣いが出来るだけでなく、察しがいい。私は「うん」と頷いた。驚いた顔で「まじ?」と聞き返すから、「うん」とまた頷いて苦笑する。

そんなに意外?

ただ再会した相手が支配人だったというだけなのに、なんだか恥ずかしくなってしまうのは先ほど私だけに向けられた『またね』のせいだ。

彩音に七年前のことを話すと、うんうんと頷いてくれていたが、最後には神妙な面持ちなった。


「支配人ってさ、社長の息子だから将来は社長になるんだよね?」

「うん、そうだと思うけど」
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