俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「下」
恋人のいない家は広い
クリスタルは、俺にとって何を犠牲にしてでも共に歩んでいきたい人だ。

クリスタルの笑顔を見ると俺も嬉しくなる。涙を見ると苦しくなる。優しくて、明るくて、とても素直で、王女という権力者でありながらも民を一番に考える…。そんなクリスタルが愛しい。

だから、プロポーズをした。この愛が永遠に続くように、クリスタルと家庭を作っていけるように…。

しかし俺は今、重い足取りで家へと帰っている。その隣に愛しい人はいない。指輪は小箱に入ったままだ。

「大嫌い!!」

クリスタルの言葉が頭の中で回る。それがショックで、今にも泣いてしまいそうなのを懸命に堪える。

「……ただいま」

俺が家に帰ると家は真っ暗で、誰もいないのがわかった。クリスタルは帰ってこないと予想はしていたが、当たった。

ベルが心配げな表情で俺に近づく。俺は「ただいま」と笑顔を作り、ベルに優しく触れた。

その刹那、俺の手に伝わるたしかな温もり。ベルの優しい目が、俺の心を優しく包んでくれているような気がした。

「リーバス!」

頭の中に、クリスタルが浮かぶ。リリー・オクトだった時のクリスタルも、クリスタル・モーガンに戻った時のクリスタルも、俺の隣で笑ってくれたクリスタルも……何もかも。
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