俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「下」
「うぇぇ……」

クリスタルは、とても辛そうに顔を歪めてトイレに駆け込む。つわりだ。

食べ物の匂いに反応して、すぐに吐いてしまう。俺はただ、背中をさすってやることしかできない。

家事も、ゆっくりとしかできなくなってクリスタルは「ごめんね」と言うことが多くなった。俺は「いいんだ。気にするな」と言って、クリスタルの頭を撫でたり、キスをする。クリスタルの不安が、少しでも和らぐように……。

少しずつクリスタルのお腹は大きくなっていき、つわりも収まっていった。病院へ一緒に行った時に赤ちゃんの心臓の音を聞かせてもらった。

ドクドクドク……。俺やクリスタルよりとても小さくて、か弱い存在。でも、クリスタルのお腹の中で頑張って成長している。

感動して、泣きそうになった。

「生まれてきたら、抱っこしてあげてね」

クリスタルがそう言って笑う。俺は「ああ、そうする」とクリスタルにそっとキスをした。

お腹の中の赤ちゃんにも、この愛が伝わってくれたらいいな…。そう思った。
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