俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「下」
俺がそう言うと、クリスタルは「そうですか。よかったら、どうぞ」と俺を警戒することなく部屋の中に入れる。馬鹿な女だ。一度、俺にナイフを突きつけられたことがあるというのに…。

「あの…大丈夫ですか?」

お茶を用意するクリスタルに、俺は声をかける。クリスタルは「大丈夫です」と答えた。

「朝は熱がありましたが、今は体がダルいだけですから…」

なるほど、熱はないのか…。なら助かる。移されたらたまったものではない。

「そうですか…」

俺は心の中で笑う。クリスタルは微笑んだまま、俺にハーブティーを出してくれた。

「この辺りのことをお聞きしてもよろしいですか?」

「私は住み始めたのは最近ですが、答えられる範囲でお答えします」

たわいもない話をして、とにかくクリスタルを油断させる。クリスタルは俺の話に相槌をうち、笑う。

「そういえば、あなたは王女様…ですよね?」

しばらく話した後、俺はクリスタルに言った。すると、クリスタルは一瞬悲しげな表情を見せた後、「…はい」と静かに言う。
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