俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「下」
眉間にしわを寄せる俺を、心配そうにベルが見つめる。クリスタルがいなくなってしまった時は、ベルに「大丈夫だ」と笑顔を作って撫でてやることができた。しかし、クリスタルが大罪人によって捕らわれてしまった今はそんなことをする余裕がない。

「……一体、どうすればいいんだ……」

イワンやリーなら、何かに気がつくかもしれない。しかし、この写真を見せればクリスタルが誘拐されてしまったことが知られてしまう。

イワンやリーだけならともかく、もうすぐ子供が生まれるアレックスたちに心配をかけてしまいたくない。クリスタルが誘拐されたのは俺のだというのに……。

クリスタルのことを思うと、ますます気持ちが焦るばかりだった。



クリスタル、監禁二日目。と言っても、本人の時間の感覚はわかんねえと思うけどな。

朝、俺は掃除をして再び使えるようにしたキッチンに立ち、朝食の準備をする。

囚人と俺の食事は分けなければならない。上下関係はつけておかないとな。
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