俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「下」
俺の食事は、俺が特製ブレンドした紅茶とクロワッサン。そして卵料理とサラダだ。クリスタルの食事は、りんご一つだけ。きちんと皮は剥いてやる。

水と少量の食事で生きていけるだろう。甘いりんごが食べられるだけありがたいと思え。俺は刑務所にいた時は、まずくて残飯かと疑いたくなるようなものを食わされていたんだからよ。

自分の食事を、広間に置かれた椅子に腰かけて食べる。豪華で立派な椅子だ。俺にぴったりの椅子。この世界の支配者にぴったりだ。

食べた食器を片付け、クリスタルを閉じ込めている地下室へと向かう。復讐の相手が同じ屋根の下にいると思うだけで、背筋がゾクゾクした。

光の世界から、暗闇が手招きする地下室へと進む。またクリスタルは泣いているだろうか。もっともっと嘆き悲しめ。お前たちの苦しみは、俺にとっては快楽だ。

「……入るぞ」

一応、レディーのいる部屋だ。そう言ってドアを開ける。

クリスタルは、目を赤く腫らして眠っていた。その表情は苦しげで、いい夢を見ていないのは明白だ。
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