俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「下」

ベルの散歩から帰ってきても、「おかえり」と言ってくれる人はいない。リビングに朝ごはんのおいしそうな匂いはしない。

リビングはとても暗くて、自分の家だと言うのに、重苦しくて居心地が悪い。

「クーン…」

悲しげにベルが鳴く。いけない。気持ちがベルに移ってしまった。

「大丈夫だ。大丈夫…」

俺は笑顔を作り、ベルの頭をそっと撫でる。

「ご飯はすぐに用意するからな」

まるで、世界平和対策本部ができる前のようだ。家族のいない俺はとっくに一人に慣れているはずなのに、とても寂しくて、虚しくて…。

「……ああ……」

頰を涙がまた伝う。一度あふれたら、もうすぐには止められない。

俺は、ベルの食事を用意した後、コーヒーを飲んで家を出た。



俺はクリスタルを見張っている。リーバスの一番の弱点は、クリスタルを傷つけられることだ。その機会を伺っている。

あの馬鹿のことだから、クリスタルへの気持ちは冷めたりしないだろう。

クリスタルは空き家の近くに住む住民たちに挨拶をし、空き家の管理をしている男に会って空き家に住むことになった。

クリスタルは近所の人の仕事を手伝っている。畑仕事だ。クリスタルはしたことがないだろう。