俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「下」
しばらく馬車に揺られると、小さな家々がポツポツと見え始めた。そして、馬車は一つの家の前で止まる。

「ここが……」

俺の呟きは、風の音によってかき消されてしまった。

小さな一軒家。赤い屋根が特徴的だ。

ロビンが迷わずに家の扉に向かって歩く。俺とレムも顔を見合わせ、ロビンに続いた。

「クリスタルさんは、ここでずっと暮らしてたのかぁ」

レムが部屋に置かれた少ない家具を見ながら言う。クリスタルは、ここでずっと暮らすつもりだったのだろうか。

「しかし、家具が少ないな…」

「そりゃあ、一年も二年も経ってるわけじゃないんだぜ!家具が少ないのは当たり前だろ?」

俺に向かってレムは笑いかける。こんな調子だが、レムもクリスタルのことを心配しているのだ。

「……絶対、ジャックから救う。お前のそんな顔をいつまでも見てられっかよ!」

レムはそう言って、リビングに置かれている棚を捜索し始める。俺も「ああ、見つけよう。しかしだな…俺は至って普通だぞ」と言いながら、別の場所で手がかりを探す。
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