俺の恋人曰く、幸せな家庭は優しさと思いやりでできている「下」
ロビンは息を荒くし、今にも倒れてしまいそうな様子で俺に告げる。俺は、孤児院にいた頃の記憶を振り返ってみた。

ロビンは、男のようだった。男よりも強くて、守られるのではなく逆に誰かを守る人。だから密かに憧れたのだ。自分もいつか大切な人を守っていきたいと…。

ロビンは、俺のそばにいて心配してくれたり、笑いあったりした。もしもロビンの気持ちに気付いて、俺もロビンを好きになっていたら、きっとこの物語は最初から違っていただろう。

俺は、ロビンの肩に手を置く。それだけでロビンの頰が赤く染まる。ああ、クリスタルと一緒にいたから気づけなかったんだな。ロビンはどれほど苦しんでいたんだろう。好きな人に好きな人がいる……。それは、耐え難いほど辛かったのではないだろうか。

「ロビン、俺にはクリスタルしかいないんだ。この気持ちは、同情でも妥協でもない。たった一つの愛なんだ。クリスタルが俺を嫌いになっても、俺はずっとクリスタルを想い続ける。……この身が滅ぶまでずっと……」

クリスタルは、世界が平和になるまでずっと、名前も身分も全てを偽っていた。俺は、あいつを王女だから好きになったわけではない。愛されなかった彼女を、かわいそうだと思って好きになったわけではない。
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