蜜な罪
私が拓と出会ったのは、半年前の…それはまだ暑い夏の夜だった。


仕事があまりうまく行かず、彼氏とも会えない日々。
友達も忙しく、ストレス発散ができない。
そんな時だった。


悪い事が重なり心労がひどかったと思う
その日私は一人で居酒屋へ行き、嫌な事を忘れるべく飲んでいた。
そんな時、紺のスーツを着た20代後半の男性が隣に座って、話かけてきた。




それが拓だ




「お姉さん、一人?」


「…そぉですけど、何か?」


私は苛立っていた。
何せ、いきなり話かけてくる奴に信用なんか置けるはずがないから
さっさと飲んで帰ろうと、手元にあった焼酎を一気に喉へ流しこんだ



「すごい飲みっぷりだね…なんかあった?」


馴れ馴れしい男。
だけど、お酒が入っていたせいか、彼にならすべて話せるんじゃないかと思ってしまった

拓はあたしの話を、聞き漏らさないように真剣に聞いてくれて…
きっと、その時から私は墜ちていたんだろう。


結局、拓は私の介抱役になってくれた。
フラフラの私を家まで送ってくれると、ポケットの中にあった名刺の裏にメールアドレスをすらっと書き込むと私に持たせて、さっさと帰って行った。



「また会おう」という、誘惑を残して。


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