きみの理想の相手
「あはは。そしたら、連絡するといいよ。相手も嬉しいから。でも、いいな。俺も久しぶりに恋愛したくなってきた」
背筋を伸ばしながら、俺に恵さんは言う。
「……俺は、恵さんが羨ましいです。やりたいことやって、きちんと自分というものを持っていて」
俺は普通の大学生で、何も持っていない。
財力もないし、何をしたいのかなんて分からない。
だから、心配になるんだ。
「そう?俺は輝くんが羨ましいよ。まだまだいろんな可能性を持ってるし、恋愛だって自由にできる。社会人になると、出会い少なくなるから」
恵さんは、俺にとって憧れであり、ヒーロー的存在だ。
どんな人にも明るく元気に嫌な顔せずに、対応する姿は初めて会った時から人として憧れていた。
そんな人に俺が羨ましいと言われた。
こんな自分でもまだできることがあるんじゃないかって。
「…恵さんにそんなこと言われるなんて思いもしませんでした」
「何言ってんの。俺どういう存在だと思ってるの」
「憧れです」
「…光栄だよ。そんなこと言ってもらえて。今日はいいことあったな」
恵さんは笑顔で俺に言った。
恵さんは、俺にじゃあ、帰ろうか。もう遅いしと言って、居酒屋を後にした。
「今日は、ありがとうございました。話聞いてもらえてなんかスッキリしました」
俺たちは居酒屋から出て、外で話をした。
「いや、俺も楽しかったよ。久しぶりに輝くんに会えたしね」
恵さんはニコッと口角を上げて微笑んだ。
「また、なんかあったら相談してもいいですか?」
「いいよ。気兼ねなく連絡して。あ、ライン前に教えたままだから」
「はい。ありがとうございます」