きみの理想の相手

恵さんはじゃあと手をあげて、去っていた。
俺は、恵さんが見えなくなるまで恵さんの背中を見ていた。

すると、恵さんは不意に振り向き、大きい声で俺に言う。

「あ、あのさ、輝くん。好きだと思ったら素直に思いぶつけた方、いいよ。これは俺の経験上」

俺に言った後、恵さんは真っ直ぐの道を歩いていた。

俺は駅方面に行き、恵さんと話した内容を思い出していた。

素直になる。今までも、まっすぐに伝えてきたつもりだが、もっと理実さんに伝えないとわからないのかもしれない。

その一方で、理実は。

「亮介」

私は待ち合わせ場所である駅に着いて、さっきに亮介がいた。

「あ、理実来たか」

私に気づいたのか携帯を持っていた亮介は、ズボンに携帯を入れて、私の方を向く。

「なんか用事でもあった?」

私は無表情で亮介に言う。

「不機嫌そうだな」

「……いや、そんなことないよ」

「そう。それにしても、表情がいつもと違うけど」

「別に。なんもないよ」

私は不機嫌になってる訳ではない。

ただ、亮介の態度に困惑している。
電話をしてきた時点で私は亮介の気持ちがわかってしまったから。

これがただの電話しただけならいいが、高校からつるんでいるからわかるんだ。

だから、どうすればいいか分からないんだ。

「理実、どこ行きたい。行きたい場所ある?」

「……じゃあ、いつも通ってる喫茶店でいい?」
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