きみの理想の相手

亮介は、私に声をかけていたが、完全無視した。
バスの中には、男性サラリーマン、主婦、学生が数人程度いるだけだった。

だけど、私の立場を考えてよ。
恥ずかしいに決まってんだろ!

「こっち!」

私の気持ちなど無視して、さらに大きい声で私に言う。

私はSuicaをタッチすると、バスの後ろにいる亮介と前の席に行きたい私の気持ちでグラグラ揺れていた。

戸惑ってその場に立ち尽くした私をみて、運転手さんは、もう発車するので、席に座って下さいとアナウンスで言われてしまった。

その時、亮介は私に再度言う。

「理実」

大きい声で私の名前を呼ばれて、私はハッとした。

付き合っていた時のことが蘇った。

ただ私の名前を呼ぶだけなのに。
付き合っていた頃の思い出が頭の中で引き戻される。

私は仕方なく、後ろにいた亮介の隣に座る。

「…久しぶりだな。バス一緒に乗って、隣で座るの」

「……それゃ、高校以来だからね」

私はチョコンと座り、亮介の顔を見ずに真っ正面を向いて返事をした。

「…俺のせいだよな」

窓を見ながら、亮介は私に言う。

「え?」

私は亮介を見て、目を丸くした。
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