きみの理想の相手
「尊くん?」

左手にはコンビニの袋を片手に持ち、缶ビールやつまみが入っているように見えた。

「何してんの。こんな土砂降りの中」

尊くんがさしていた傘を私の方にさしてくれた。

「…あ、りがとう」
私は尊くんに礼を言い、傘の取手を掴む。

「どうした?」

「……なんでもないよ」

「なんでもなくないだろう。こんなとこで。実さんのとこで飲もうとしてたのか」

そう言われると、私は首で頷く。

尊くんは何かを察したのか私の真正面に来て、ただ側にいた。

「……話せないことなら、話さなくていいけど。話せるんだったら、俺なりに聞くから」

私の頭にポンポンと右手で撫でた。

「なっ。ってか、今日なんか優しくない?」

私の近くまできて頭を撫でたので、尊くんとの距離が近くなり、私は目を丸くした。

「いつもだろ。ほら、もう0時回ってるから。ほら、行くぞ」

「え?どこに」

「俺の家」

私は驚いて、尊くんを見る。

「いやいや。こんな夜中に」

「変なこと想像してんだろ。なんもしねぇから。ほらすぐそこだから」

私は尊くんに手を引かれて、私は抵抗することもできたがしなかった。

尊くんの手がやけに温かくて、離せなかった。

その時、尊くんが私に手をひいて、部屋を招いてくれたのは、尊くんなりの優しさがあった。

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