きみの理想の相手
「…変わらないだろ。それより早く着替えろよ」
尊くんが優しくなったのは、分からないが。
着替えるから、こっちこないでねと尊くんに私が言うと、はいはいと答えて洗面所で顔を洗っていた。
濡れていた服を着て、洗面所にいる尊くんに礼を言う。
尊くんは急いで顔を拭いて、玄関で靴を履いていた私の後ろに立っていた。
「……なんかあったら、連絡しなよな」
「ありがとう」
私は靴を履いて、尊くんと真正面に向き合って昨日の夜の気持ちがぶっ飛んだのか力が湧き上がってくる。
昨日の夜は、あれは昔のことを思い出したから苦しくなっただけ。
それとも、亮介をなんとも思ってないから?
尊くんの家から職場は近いが、昨日の今日で仕事に行く気にはならない。
誰も同じ格好だと思わないけど、さすがに昨日と同じ格好の服で行くのは変に思われると思い、職場に連絡して仕事を休んだ。
有休はまだ残ってたし、仕事も昨日の内に片付いたから休んでも支障はない。
ただ人手が足りないだけだ。
「今日どうしようかな。まずは、駅に戻るか」
私はすぐ近くにあるバス停まで歩いて、15分後に駅に着いた。
何をするか考えていない私は、駅から徒歩10分ほどで着く某人気会社のカフェに寄ることにした。
そのカフェは、店員さんがイケメンで話題であり、どのドリンクも美味しいのだ。
まだ行けてなかったので、行くことにした。
行きたいという気持ちがある中で、ゆっくりと自分と向き合いたいという気持ちの方が強かった。
カフェに着いた私は自動ドアが開くと、いらっしゃいませと店内の明るい声が響き渡る。
朝ということもあって、人はあまり少なかったが、私にとっては好都合で、自分の気持ちに整理したい私として居心地はいい。
会計スペースにいたカフェ店員に話しかけて、注文をした。
「カフェモカ一つに、クリーム多めで」
私はカフェ店員に注文品を言い、店員は私に言った後作り始めた。