きみの理想の相手
 
「カードですね。では、ここに置いてください」

金井さんはそう言ってから、ピッピッピッと読み終わった後、レシートを出した。

 漫画本を袋に入れたら、もう金井さんとはお話しできないし。

 何も分からないままだ。

 これだと前と同じじゃないか。

 前と同じだ。

 私は泣きそうな眼をこらえながら、金井さんが何かを言おうとした時だった。

「…あの……これ」

 私は金井さんに押し付けるように私の連絡先を渡した。

 その瞬間、私は逃げるように金井さんの元から去っていた。

 金井さんの顔は見なかったから、わからないけど。

 私のこと認識しているのかな。

 毎日、本屋に通っていたとしても、常連客の顔を覚えている訳がない。

 私は早足でいつも乗っているバスまで走った。

 絶対、引かれた。

 私は落ち込みながら、家路についた。

 
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