きみの理想の相手

「それは、私に言っていいの?」

尊くんは、私と目を合わせた。

「…ああ。暦だから聞いてほしいんだ」

尊くんはちらりと私の目を見て、私に返事をした。

「え?」

私は思いがけず、声が出た。
ほんとに意地悪とか冗談じゃなくて、本気で言ってるんだ。

尊くんがこんな真剣に話す姿は、高校の時、勉強を誰かに教えていた時を見ていた以来の光景だ。

「俺は、小さい頃から遊んでいた年上の幼なじみがいる。そこから、16年間どんな時も話して笑っていた。だけど、ある時交通事故で亡くなった。それが、いつも行っているカフェの娘さん」

尊くんは迷いもなく私に話す。

「あそこのカフェ?」

私は仕事場の休憩の時間、いつものカフェに寄るところだ。

「そう、それが昨日命日だった。あのカフェに昨日いただろ?亮介さんと」

幼なじみの命日。そんな時に私は、昨日亮介とカフェにいた。

「…え?いたの、尊くん」

私は目を丸くして、尊くんを見る。
まさか、尊くんがいたとは。
確かに。家から近いし、すぐ来れる距離だけど。まさか、いるとは。

「命日には朝早くから行って、ずっとあそこにいるんだ。だから昨日は亮介さんがいたのは予想外」

尊くんは私から目を逸らして、缶コーヒーを手に持ち、昨日のことを話し始めた。

「…中入ってきても良かったんだよ」

私はそう言って、尊くんに思ったことを素直に言う。

「いやいや。無理だから。だって、なんとなくだけど。行ける雰囲気じゃなかったかなって」

尊くんはそう言いながら、缶コーヒーをテーブルに置いてから、私を見た。

「え?…あ、そっか」

私は尊くんの返答に困った。
まさしく、その通りだだから。
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