きみの理想の相手
「私、なんか言ったっけ?」
私はなんのことかと思い、下に俯いている尊くんを下から覗いた。
「…覚えてない?高校の時、俺が男子の友達と冗談で俺のこと言いあってた時、言ったよね。暦は、友達だからと言って、人を傷つけるようなこと言っちゃダメだって。そこから友達はなんも言わなくなったんだよ」
尊くんは下から上を見あげて、私の顔に近づいてくる。
「……え?そんなこと言ったんだ」
私は近づいてくる尊くんに一歩ずつ下がりながら、話を聞く。
「まあ、覚えてないかもな。暦その時、恵さんと別れたばかりだったからな」
私が下がっても尊くんは私に近づいてくる。
「……そっか」
私はそんな尊くんを私は無視した。
だけど、尊くんは私に近づき、行き場のない壁まできてしまった。
「だからかもな。暦に話したくなるのは」
「え?尊くん」
尊くんがそう言った途端、私は目を丸くした。
だって、あのクールで何事も冷静な尊くんが私を抱きしめてきた。
黙っている尊くんは、私の胸に顔をつけて聞いた。
「どうしたの。尊くん」
私は尊くんの胸を押し付けて、彼と離れた。