きみの理想の相手
「はーい」

私も店長に明るく、手を挙げて言う。
尊くんはなぜか私の顔からを見ていた。

「なに。どうしたの?」

私は尊くんに聞くと、頬杖をついていた。

「いや、別になんにもないけど」

「そう。…尊くんはさ、なんで私なの?」

私は料理が来る前にこれだけでも聞きたかった。

尊くんは、私を好きになってくれたことを教えてくれたけど、ほんとに疑問だ。
まさか、私を好きだなんて。

長年会っていなかったけど、好きなのは高校生の頃からということも信じられないでいる。

「はあ、そういうことは、この間聞いただろ」

尊くんは、ゴクッと水を飲んで私に声を発する。

「うん。それは分かっているんだけど、なんかね。高校生の頃からだけど。信じられなくて。だって、冗談でお互い結婚してなかったら、結婚しようとか言ってたよね」

私は思っていたことを口にする。
冗談で楽しく笑って、ふざけていた男友達。
それなのに、私のことこんなに思っていたとは知らなかった。

「…高校の時から好きだからあんなこと言ったに決まってんじゃん」

尊くんは頭をかいてから、照れてる様子であった。

「いや、でも」

私は目を泳がせて、戸惑いを隠しきれない。
だって、高校の頃、そんな素振りさえ見せなかったから。

「好きな人には意地悪したり、からかったりするんだよ。それと同じ。だけど、お互いに結婚しなかったら、しようと言ったのは本気だよ」

尊くんは照れている様子で顔を左側に向けて、私から目線を逸らした。

「いや、でも途切れず彼女とかいたよね?」

私は目を丸くして、尊くんの言葉に固まってしまった。

いやいや、お互いに結婚しなかったら、しようと言っていたのは冗談じゃなくて本気ってこと。

でも、前から彼女とかたくさんいたよね。
なんで、私なの。


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