きみの理想の相手
金井さんの心境と恵くんの願望
「もしかして、輝が言っていた好きな人って」
「そう」
「ってか、恵くんとあの人知り合いだったの?」
「…らしいな」
「……どうすんの?これから?」
「……ゴメン。ちょっと寄ってから行く」
俺は駅より逆方向に行き、トボトボ歩いた。
廉が俺に話しかけてくれていたが、頭の中には、恵さんと理実さんの情景が浮かぶ。
隣にいた恵さんと理実さんはお似合いだった。
二人が並ぶと、絵になる。
その情景を浮かべると、グシャグシャと頭をかいて、あーと小さい声で呟き、自分の右手を握りしめた。
まさか、恵さんと理実さんが知り合いだとは。
もしかして、ずっと恵さんが好きだったのは。
いやいや、まさか。
でも、そんなことって。
俺は悶々と考えながらも、まさかのことを考えた。
いつの間にか近くにあったベンチに座り込んだ。
考えれば考えるほど、マイナスな方向に考えてしまう。ダメだ。
俺は意を決して、携帯を開いて、理実さんにラインをした。
さっき程は邪魔して、すいません。
明日の夜、空いてますか?
とラインをした。
返ってくるかはわからないが、今悩んでいることを理実さんに聞きたい。
*
「驚いたな。まさか、輝と知り合いだとは」
俺は正直まいっていた。
真正面に暦ちゃんがいるが、ただ目を丸くしていた。
「まあ、はい」
暦ちゃんは返事をして、テーブルに置かれている紅茶を手にして飲んでいた。
「…あのさ、いやまた今度にしよう」
俺は今考える余裕がない。
偽りの笑顔を浮かべて、席を立った。
「はい」
暦ちゃんも素直に返事をしてくれて、安心していた。
暦ちゃんの顔すら見れなかった。
「じゃあ、行くね」
俺は今ここにいると、ただの嫉妬でおかしくなりそうだったから。