きみの理想の相手


「え?えー、嘘!金井くんと恵さんが知り合いだった?」

「うん」

「いやいや、マジか」

「うん」

私は琴美の返答にただ頷いていた。
そして、琴美は言う。

「……理実は、どうしたいの?金井くん?恵さん?どっちなの?」

「…分からない」

「…じゃあ、頭の中で考えちゃうのは誰? 傍にいたいなって思うのは」

「……」

私は考えた。考えて考えて、考えたら、頭の中に一番思い浮かべたのは、金井さんの笑顔で真剣な表情だった。

「…金井さん」

私はポツリと呟く。

「…なら、決まりだね」

そんな姿を見ると、琴美は笑顔で私に問いかけた。

「…私、言う。ちゃんと」

私は琴美に話を聞いてもらって、スッキリしたのか胸のあたりが前よりいい。

カフェの中で人が騒がしい中、琴美がいる前で携帯を取り出して、ある人に連絡する。

ある人とは、恵くんだ。

私は通話ボタンを押して、恵くんにかけた。

すると、恵くんは出た。

「はい」

「私だけど」

「…どうしたの?」

「…私、やっぱり恵くんと付き合えない」

「え?いや、待ってよ」

「暦ちゃん」

「ゴメン」

ゴメン、恵くん。自分勝手で。
だけど、やっぱりハッキリと口で伝えないと。

どんなことがあっても。好きなんだ。金井さんが。

私は決めた。恵くんが傷つくのは見たくないけど、私の本当の気持ちを伝えないと、それより傷ついてしまうから。

「ゴメン。琴美行ってくる!」

「…うん。頑張って」

「ありがとう」

私は野村書店まで向かった。いるか分からない金井さんに会うために。

ハアハアと息を切らして、私は野村書店に着いた。

受付には金井さんの姿があった。

いた!

「…いたけど、どうしよう」

私は本屋をウロウロしていると、金井さんと目があった。

え?こっちくる。どうしよう。

「理実さん。さっき連絡したんですけど。見ました?」

金井さんは、私をまっすぐに見て、聞いてくる。

「いや、ごめん。見てなかった。あ、ほんとだ。きてた」

私はカバンから携帯を取り出して、確認した。

「…あの話があります。もう少しで上がるので待っててくれませんか?」

金井さんは頬が赤くなっていて、私に言う。

「…はい」

私は金井さんから目を逸らして、返事をした。

「あれ?輝」

すると、さっきほど金井さんの隣にいた男性が私たちの後ろにいた。

「廉。どうしたんだ?」

金井さんは驚いた顔で、廉を見て発した。

「…いや、輝の仕事ぶりを見ようと思ってさ。隣は、さっきの」

廉は頭を手に取り、からかうように金井さんに言ってくる。
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