きみの理想の相手
「…すいません。最初は見守っているだけでいいと思ってたんですけど。ちょっと前と同じ感じがしたんで」
廉さんは本当に申し訳なさそうに、私と恵くんに謝った。だけど、その理由には訳があった。
「前って元カノ?」
恵くんは目を丸くして、廉さんに聞いてきた。
「そう。急に最近、連絡きたらしい。それだけじゃない。また、やり直したいと言ってるらしい」
廉さんは、怪訝そうにどこかを見つめていた。
「…なんで。輝の想いはどうだっていいのか」
恵くんも事情を知っている様子で、廉さんに言っていた。
「あの、話を割り込んでしまいますけど、元カノって?」
私は分からなかったので、二人に聞いた。
「輝の元カノで、ある元凶になった人物」
恵くんは声を発して、金井さんについて話した。
「元凶って」
私は元凶?と二人に聞き返した。
すると、廉さんが声を発した。
「好きなのに、否定ばかりしてくる。否定クラシャー」
「否定クラシャー」
私は繰り返し言葉を返す。
否定クラシャー。
「はい。輝は元カノにそういう否定なこと言われて、精神まいったんです。2年後には治って、回復してバイト始めてから理実さんに会って、本当に幸せそうだった。だけど、今さら、連絡がくるとは予想だにしなかった」
「……じゃあ、どうすればいいんですか?」
私は、恵くんと廉さんに聞いた。
何も私は出来ないの。
「元カノが諦めるまで待つしかない。だけど、ひとつ方法はある」
恵くんは、一瞬黙ってから、私たちに声を発した。
「なに?」
廉さんは首を傾げるように恵くんに聞いた。
「元カノと輝が話し合うんだ」
恵くんは私と廉さんを見てから、はっきりした声で言う。
「え?それって、意味あるの?」
廉さんは事情を知っているから、恵くんに聞き返す。
「ある。やるだけやってみて、ダメだったら考えるしかない」
恵くんは心配そうにどこかを見つめていた。
「…そうだね」
廉さんは素っ気なく返事をしてから、何か納得しないように思えた。
「…じゃあ、決まりだね。元カノさん、いるんだろう?そこに」
恵くんは誰か後ろにいるのか見ていた。