きみの理想の相手

 琴美は私の隣にきて、うーんと唸りながら、いつもの様に冗談に言うのではなく、真剣に聞いてきた。

「私は特に何も思ってないよ。今は片思いしている相手がいるんだから」

 私は、次は何をしようと曲を選びながら、タッチパネルを弄っていた。

「ふーん。亮介先輩は、どう思ってんのかね。私はアリだと思うけどな。あのアルバイト店員よりはいいと思うけど」

 琴美は長い脚を組みながら、私にアドバイスをしてきた。

「……琴美、私が亮介と別れた理由、分かるでしょ」

「うん、わかってるよ。価値観の不一致でしょ」

 琴美はカバンから携帯を取り出してから、私に言った。

「だから、亮介とは合わないんだって」

「ふーん。確かに価値観は重要だね。でも、今は成人して働いている大人の男。少しは変わったと思わない?」

 琴美が私の図星をついていた。

 わかってる。

 亮介は変わったこと。

 そう、みんな変わって当たり前。

 皆、大人になるんだから。

「…まぁ、あんまり考えないで。理実にいい人はいるでしょ。そして、私にもいい人がみつかりますように。よしゃ、歌うよー」

 持っていた携帯をテーブルに置いた後、マイクを片手に持ち、十八番のミスチルの有名な曲を歌い始めた。

 私は琴美の歌を聞きながら、私は感じていた。

 元カレの登場で私は片思いの彼に一方的に期待していた。



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