きみの理想の相手
 
 金井さんはフォークを片手に持ち、チョコミントパンケーキを私の目の前に差し出していた。

 なんだ、なんだ。

 私は戸惑いながら、金井さんに言う。

「あの、これはちょっと。人前ですし」

 金井さんの様子を気にしながら、私は素直に彼に聞いた。

「…そうですよね。分かりました。だけど、今がチャンスですよ。今人少ないですし」

 周りを見渡しながら金井さんは私に言う。
 確かに。今はお昼前だからか、人は少ないし。

 店員も客も仕事・食事をしていて、周りを見ていない。

 いやいや、無理だよ。無理。

 人前だし。

 自分でそう思いながら、金井さんを見る。

 金井さんは一旦フォークを皿に置いて、私を見た。見た瞬間、フォークを私の口元に近づけた。

 その時、私は何を思ったのか。

 金井さんが私の口元に近づいてきたパンケーキをパクりと食べてしまった。

 思いのほか、金井さんの顔が近くにあり、目を泳がせながらパンケーキを口にした。

 私は両頬にパンケーキをモグモグと食べながら、金井さんを見る。

< 29 / 154 >

この作品をシェア

pagetop