きみの理想の相手

「なんかあったら、いいんですよ」

 私は、優しく彼に言った。

 だって、私に何か伝えたいということは、わかってるから。

「なんでもないですよ」

 金井さんはただ笑顔で私に微笑んで言った。

 私は金井さんの笑顔は好きだけど、何かが心配になる。

 本当の笑顔じゃなくて、偽りの笑顔なんじゃないかって。

「分かりました。では、また連絡しますね」

 私はカバンを右手で強く握りしめて、呆然と金井さんを見てから、返事をした。

「…はい。また」

 金井さんは返事をした後、私を見てから去っていた。

 私は彼の姿が見えなくなるまで、見届けた。

 だって、もっといたかったけど、彼は違かったのかもしれない。

 私のことが知りたいって思ってくれているのは、本当だと思いたい。

 私は彼が見えなくなった後、地下鉄に向かい、そのまま寄り道せずに帰った。
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