きみの理想の相手

「はい。大丈夫ですよ。琴美さんをちゃんと送り届けますよ」

 吉木さんは亮介の隣に立ち、少し長めの黒髪で細い目がやけに怖い印象を受ける。

 亮介は友達が多い方だけど、信用している人はごくわずかだ。

「わかった。じゃあ、吉木さん。琴美のこと、よろしくお願いしますね」

 私はカバンから手帳を取り出して、余白のページを破って、ボールペンで琴美の住んでいる住所を書いて、渡した。

「では、また、お会いしましょうね。暦さん」

 吉木さんはそう言ってから、琴美を右肩で支えながら、外へ出てタクシーを呼んで帰っていた。

 琴美、ほんとごめん!

 きちんと、次会った時、謝るから。

 心の中で琴美に謝った。

 私は琴美を初めてあった男に送らせるのは、正直言って、心配だ。

 だが、亮介の言ったことを信じたいと思ったから。

 前は亮介のこと、信じることが出来なかったから。

「…無事に帰ったな。じゃあ俺らも帰るか」

 亮介はフゥと息を吐いてから、帰ろうとしていた亮介を引き止めた。

「待って。琴美と食べた分、お金、払うから」

 私は急いで、カバンから財布を取り出した。
 
 亮介は、私の右腕を掴んできた。


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