きみの理想の相手


「輝〜!何してんの」

 母は俺の部屋に向かって、叫んでいた。
 俺は寝返りをしながら、母の声が耳に響く。

「なに。もう朝だよ。大学遅れるよ」
母は、起きない俺に大きい声で叫んでいた。

「…っ、起きたから!」

 俺は母に聞こえるように、大きい声で言う。

「そう、ならいいけど。ちゃんと起きてくるのよ」

 母はため息を混じりに言いながら、リビングへと去っていた。

 俺は、こないだ理実さんと会ったことを思い出していた。

 初めて俺が働いている本屋で見かけたのを覚えている。あんなに可愛いなんて思わなかった。

 あれは、4月のことだった。

「新人君。ここがこうだよ」

「はい」

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