きみの理想の相手
*
「輝〜!何してんの」
母は俺の部屋に向かって、叫んでいた。
俺は寝返りをしながら、母の声が耳に響く。
「なに。もう朝だよ。大学遅れるよ」
母は、起きない俺に大きい声で叫んでいた。
「…っ、起きたから!」
俺は母に聞こえるように、大きい声で言う。
「そう、ならいいけど。ちゃんと起きてくるのよ」
母はため息を混じりに言いながら、リビングへと去っていた。
俺は、こないだ理実さんと会ったことを思い出していた。
初めて俺が働いている本屋で見かけたのを覚えている。あんなに可愛いなんて思わなかった。
あれは、4月のことだった。
「新人君。ここがこうだよ」
「はい」