きみの理想の相手
私は尊君の顔を見た。
「……付き合っている人はいる」
「マジか。じゃあ、もう私の負けだね。幸せになってね」
私は久しぶりに会ったのに確信していたんだ。
彼女がいることは。
そういうのは何故かわかる。
別にいいけどね。私の負けだけど。
「……だけど、まだ、独身だけど」
尊君はあっけらかんに目を丸くして見てから、私に声を発した。
「あの時はあの時のノリで言っただけ。だから、付き合っている人がいるなら、それはお互い独身だけど、違うよ。パートーナーがいるから」
私は尊君にそう言ってから、真っ正面にいる彼を見た。
「……パートーナーか。いてもいなくても同じだけどね」
どこか遠くを見つめてから、何気ない言葉を私に発した。
「……どうして」
「……暦は…いや、なんでもない。じゃあ、俺仕事だから」
何故か悲しげな表情を浮かべてから、右手を上げて去っていた。
私は何も引き止めることもせず、尊君の後ろ姿を見ていた。
久しぶりに会った尊君は変わっていなかった。
だけど、天敵の尊君にはなにかを抱えているように思えたんだ。
私の携帯がブッブッと音が鳴っていた。開くと、金井さんからだった。
それから、現実に戻った。
だけど、尊君からあの言葉を聞くまで、尊くんの本心はわかっていなかった。