きみの理想の相手

 ゆっくり食べながら、隣にいた男性が何を食べているのかをちらちらと見ていた。

 すると、私に気づいた隣の男性は、じっーとこちらを見てきた。

 私は目をそらして、グビッと水を飲んだ。

「店長。会計お願い」

 私は店長を呼び出して素早く会計を済ませた。

「……ごめんね。尊(たける)君。尊君のせいじゃないから」

 店長は私がいなくなった後、隣の男性に話しかけていた。私のいない所で。

 隣の男性・尊は黒髪で目が細くて、細身の体型をしていた。尊は不気味な笑みを浮かべて、店長に言ったのだ。

「……いえ、特に気にしていません」

「なら、いいけど」

 店長はそう言ってから、他のお客様の対応していた。
 
「…まぁ、また会えるか」

 尊は店長が聞こえないくらいの声で言った。

 そう呟いた尊は、店長にえ? 今なんて言った? と聞かれていたが何も返答しなかった。

 まさか、あいつに会っていたとは予想だにしなかった。あいつは私にとって天敵の存在。

 現実は中々うまくいかない。





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