数学の先生はお兄ちゃん⁈…助けて…(短編)
「2年のAってどんな子ですか?」

俺は職員室で、Aの担任の佐藤先生にそう聞いた。

「そうね、大人しくていい子よ。

どうして?
何か気になることでもあった?」


俺は、少し目を泳がせ、片手を頭の後ろに持っていく。

「いや、なんでもないんですけど。」

俺の歯切れの悪い答えに佐藤先生は首を傾げる。


「あ、でもあの子、時々すごく苦しそうな顔して窓の外を見てるのよね。」

佐藤先生は思い出すようにそう言った。

「あの子は、色々複雑な子ですよね。」

俺と佐藤先生が話していると、突然そう言って1年の時担任をしていたという多胡先生が入ってきた。

「どういう事ですか?」

「リストカットとか。

親が偉い人だとかで

成績下がったら何されるか分かんないとか。

本人は全く何も教えてくれませんがね。」


多胡先生が淡々とそう言うと

佐藤先生もうんうんと頷いていた。

「助けてあげたりとかは。」

俺がそう言うと、先生達の顔は少し暗くなる。


「なかなかね。

そう言った問題は
下手に何かできませんからね。」

「でも、」

俺はそれ以上は、言葉をやめた。


Aのあの表情が俺の中から離れない。

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