刺激を求めていたオレが念願の異世界転生を果たすも、そこはラスボス手前のセーブポイントだった件
そしてついに異空間を抜け出した。

扉の先に広がっていたのはゴシック調の内装をした空間だった。

「なんて広さ・・・・・・」

おおよそ建造物としてはあり得ない程に広い空間。幾つもそびえ立つ柱はそれぞれが鉄塔のようなスケールで、頭上にはステンドグラスで絵画が描かれている。その1色分のガラスでさえも相当な大きさだ。まるで自分が小人にでもなって、西洋の教会に紛れ込んでしまったかのうような錯覚に陥る。

「ねえ・・・・・・」
「ああ、奥に”いる”な」

先頭を行く重戦士とファイターだろうか身軽そうな女性がそう言って、後ろのオレ達にも警戒を促す。

鮮血のように真っ赤なカーペットは延々と真っすぐに伸びている。横幅は6人のパーティーメンバーが全員一列に並んでも余りある、その真ん中を進んでいく。

カーペットの先にはまた扉があった。その扉の前に3人の人影。近づくに連れて緊張感が張り詰めていく、オレは無意識に弓を持つ手に力が入っていた。他のメンバーも武器を持つ手が震え、表情が強張っている。

「ようこそ勇者様ご一行」

ついに扉の前に辿り着くと、そこには漫画の中の吸血鬼の様な黒装束の背の高い男と二人の幼い女の子がパーティーを迎えていた。

ピシっとした燕尾服に身を包む男の耳はキツネの様に尖り、目は赤く、むき出しになった犬歯であろう尖った牙はその使い道をありありと感じさせるものだった。その外見の印象とは裏腹に表情や口調は柔らかい。オールバックで固められた髪は雪の様に真っ白だったけれど、肌に皺はなく青年の様にも見える。

「我輩は魔人王様直属の「幽門を守護する者」ヴァンパイア王=ティケルヘリア=サーヴァンス=ウルクイップ4世である」

やはり本物のヴァンパイア!しかし・・・・・・名前長ぇな。ゲーム画面だったら文字で出るから覚えられるけど、口頭で言われても覚えられん。ティケ=ヘネリア=バンパイア4世だっけか?

『ヴァンパイア王=ティケルヘリア=サーヴァンス=ウルクイップ4世だ。呼称は魔人族の間ではどうか分からないが、冒険者達は「ティケルヘリア」と畏怖を込めて呼んでいる』

さすがインデックスさん。ティケルヘリア・・・・・・ヴァンパイアの王ね。あいつだけでも相当にやばそうな殺気を感じるのに、それよりヤバいのが隣に二人もいるじゃねえか。何だよアイツらは・・・・・・

「ネー、あんなザコの相手しなくちゃいけないノ?幽門の鍵持ってたのってどこのどいつだったっけ?」
「確か「西方を支配する者=アスタロト」ではなかったかしら?アスタロトには不満しかないけれど、あんな下等な魔族に鍵を預けるなんてそもそもどうかしていると思うわ、ティック」

ティケルヘリアの横にいる幼女二人。一人は赤髪のツインテールで、ダルそうな話し方をしている。その外見には似合わないビキニのような黒いボンテージにはトゲの様な鉄製の装飾があしらわれている。鋭い黒い尻尾が見える。

もう一方は大人しそうな見た目の幼女で、丸眼鏡をかけ、前髪パッツンの黒髪ロング。どちらかと言えば眼鏡っ娘の方が大人っぽく見えるがどちらも見た目は12,3歳くらいだろうか。

まあ、問題は相手が幼女に見えるから本気が出せるのかとかではなく・・・・・・

「はっ、大変申し訳ありませんカミーラ様、ノブレス様」

ヴァンパイアの王たるティケルヘリアが頭を垂れ、あまつさえ二人の機嫌を伺う様な態度を取っているいう絶望しかないヒエラルキーを見せつけられているということなのだが。つまりこれは、少なくともティケルヘリア単独でもヤバいのに、それを超える化け物が二人いるということ。

この状況を他のメンバーはどう見ているのだろうか?オレは、細心の注意を払いながら、目の前の三匹の魔族から目を離しパーティーメンバーの様子をうかがう。
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