刺激を求めていたオレが念願の異世界転生を果たすも、そこはラスボス手前のセーブポイントだった件
刹那。ティケルヘリア達がいた場所が爆ぜて、一瞬にして光と闇がかき消される。代わりに粉塵が広がり始めた。
その爆発による衝撃波は一瞬にして数十メートル離れていたオレの下も駆け抜けていった。遅れて広がる煙幕が、前進していたミーアを包み込もうとしていく。
すると急にミーアが立ち止まり、ビクっと全身を震わせたように見えた。煙幕は振り返るミーアを徐々に飲み込んでいく。
「ーーーーかっ、かひゃ。アレックス、みんな、来ちゃ……ダメ」
喉元から噴き出す鮮血。糸が切れた操り人形の様に、膝から崩れ落ちるミーアの姿が煙幕に飲み込まれる。爆煙はそのままわずか後ろに居たアレックスの姿すらも飲み込んでいった。
その異変に見守っていた後方も気付く。と同時にオレの横から、何かが床に転がる音がした。
「・・・・・・え、なんで、そんな嘘だ」
「イスカ!?何をしている!?すぐにミーアを回復をしなきゃ!!」
イスカは尻もちを突き、ずるずるとそのまま後退している。手から離れ落ちた聖典が僅かな光を放って、赤いカーペットを照らしていた。
「ーーかった」
「え?」
「すぐに回復魔法を使ったけど間に合わなかった!もう……もうミーアは死んでるんだ!!」
イスカの悲痛な叫び。オレは一瞬目の前が真っ白になって目を見開いていた。あれだけ頼りがいのある戦士が一瞬にして殺された?いったい煙の中では何が起きているんだ。
それになにより、オレのフラッシュ・ショットは確かに命中したはず。そして間髪入れずに放ったミネルヴァお姉さまの魔法も発動していた。元々の作戦がイニシアチブを取る為で、起点となる初弾だったとはいえ、ダメージがなかったにしろ隙を作ることはできるはずだろ。まさか、それすらできなかったっていうのか?
「・・・・・・違う。今考えるべきは現状の把握と次の行動だ」
インデックス、この世界の治癒魔法には死者を蘇生する類のものはないのか?
『死者の蘇生は禁呪とされており、いくら回復術の最高峰のアークプリーストと言えども死した者を元に戻す術はない。蘇生は神の恩寵によってのみもたらされるが、その地点から死するまでの経験や記憶は蘇生の代償で消え去り、ある地点へと時を巻き戻して飛ばされることになる』
蘇生するスキルはない設定か。もしゲームなら、かなり難易度高いだろ。でも、条件付きで生き返る方法はある・・・・・・インデックスの言い方からして、かなり回りくどい感じがするけれど、要は”全滅すればセーブポイントに戻り、蘇る”ってことなのだろう。
「--待てよ?それって、じゃあもし」
「ツバサ!何を呆けているの!?ミーアがやられたのだとしたら私達でアレックスを支援しなくては!」
確かにそうだ。まずは目の前の敵を倒すことが最優先に決まっている。浮かんだ不安はそれから考えたら良い。そうだよ。そうだよな?
また目の前のことよりも疑問に頭が回りそうになる。オレは頭を振ってその疑問を意識からかき消した。
「オレはもう少し接近して中距離で敵の様子を見ます!ミネルヴァお姉様は引き続き後方から援護射撃をお願いします」
「お姉様……?分かったわ!いきなさいアーチャー!!」
「はい!!」
ーーーーじゃあ、もしもオレが死んだらどうなるんだ?セーブポイントに戻れるのか?それとも・・・・・・