刺激を求めていたオレが念願の異世界転生を果たすも、そこはラスボス手前のセーブポイントだった件
家から公営図書館まで歩いていくと、やはりというべきかシャツが肌にへばりつくほどの汗をかいている。
この気持ち悪い感触は一体何がどう起因して起こっているのか?そんな疑問を頭の中で繰り返してみるのだけれど、恐らくオレの脳細胞が何らかの異変でもってフル稼働したとして正解へたどり着くことは無いことは分かっていた。言うなれば味のなくなったガムを噛み続ける様な、その程度の暇つぶしというか、無意味な行動を続けたいだけなのだろう。
肌を焼く日差しをうらめしく思いながら、ふと空に目を向けると真っ白い大きな雲が2,3こ漂っている。街路樹の頭の緑が、微かだけれどさわさわと揺れる程度の風が吹いていた。
時折すれ違う人々はどこか別の世界の人のようで、挨拶なんてすることはないし、前方から近づいてくる人がいると無意識に目を逸らして、進路を空けるようにして道の端に避けていく。特に人が苦手なわけではない。だけれど、幼い頃には誰にでも挨拶をしていた自分とは、別の人間になってしまったかのようなバツの悪さを感じずにはいられなかった。
10分ほど歩いていると住宅街の中にひときわ大きな建物が見えてきた。広い敷地を覆う白い塗装のはがれかけているフェンス。青々と茂る木々、街路樹よりも居心地が良いのか急に聞こえだしたセミの声。数年前に塗り替えをしたクリーム色の外装をした3階建ての図書館。
「うおー、空調絶好調じゃん。これは閉館までコースの気配がしてきたぜ」
玄関の自動ドアが開いて、中から飛びだした冷房の効いた心地よい風が一気にかけぬけた。館内は聞いたことのあるような有名なクラシックの曲がオルゴールで流れている。
正面には受付と返却コーナーがあり、1階は懐かしい音楽やクラシックなどのCDが並んだ棚が出迎える。まだ早い時間だから人はあまり居ないけれど、小さな子どもがキッズコーナーで母親と楽しそうに絵本を見ていた。
汗をべったりとかいていたから、若干の温度差による寒さは感じたがすぐにそれは快適へと変貌した。心なしか緩んだ頬、柔らかいカーペットを踏む感触もなんだか気持ちを落ち着かせる。フロアの右手奥には3階まで行き来できる階段があり、オレは二階へと上っていく。踊り場の高い位置にある窓から差し込む木漏れ日。
この図書館では、有名所の文学作品から各種専門書や図鑑だけに留まらず、一葉少ない物のラノベまで取り揃えている所が素晴らしい。さすがにラノベなどに関して言えば一回り、いや二回り半ほど新刊から遅れている。だけど、最新のもので気になった本は家に買ってあるので、図書館にある本はある意味で「購買意欲が沸かなくても、あれば読みたい」ものが幾つかあり、そんな中から掘り出し物を見つけるという楽しさがある。
「この辺は前に来た時に攻めたけど・・・・・・んー、どうやら新しい本は入荷していなさそうだな・・・・・・」
六段作りの本棚が一定の間隔で並んでいる。子どもの頃は4段目を取るのにも階段の近くにある子ども用の脚立を使ったものだけれど、いつのまにか手を伸ばせば最上段まで届く様になっていて成長したものだなと思った。そんなことを考えながら、一昔前に流行った作品を指で追いながら眺めていく。
「うお、『捨てられたブラウン管を直してみたら、異世界リサイクルショップで億万長者になっちゃった』が全巻そろっている。やるなぁ、あなどれん!図書館め」
なんて掘り出し物を見つけた時には、テンションが思わず上がってしまって声に出っちゃったりすることもある。オレははっと口を押えて周りを確認したけれど、どうやら近くに人はいないようで、さっきの独り言は誰にも聞かれていないようだ。
『捨てリサ』シリーズは異世界転生ものの中でも日常系というか、冒険をほとんどしない。その分、村やダンジョン付近に棄てられた資源を、現代の知識を生かしながら再生利用していく物語だ。主人公が普通にショップ経営について試行錯誤している章が面白かったが、億万長者になると急に武具揃えだして、それまでダンジョンもろくに探検していなかったのに魔王退治に行くことになる展開から失速したように思う。そんなこんなで途中からは買わなくなってしまったものの、物語の終着点が気になる一冊の一つだった。「よし、候補入りだ」 と呟いて、捨てリサの4,5,6巻を手に取った。
「異世界転生かぁ・・・・・・本当にそんなことが起こったら楽しいだろうな。オレってゲームもけっこうやり込み派だし、自分でギルド設立したりするのも好きだからイケる口だと思うんだけどな」
この気持ち悪い感触は一体何がどう起因して起こっているのか?そんな疑問を頭の中で繰り返してみるのだけれど、恐らくオレの脳細胞が何らかの異変でもってフル稼働したとして正解へたどり着くことは無いことは分かっていた。言うなれば味のなくなったガムを噛み続ける様な、その程度の暇つぶしというか、無意味な行動を続けたいだけなのだろう。
肌を焼く日差しをうらめしく思いながら、ふと空に目を向けると真っ白い大きな雲が2,3こ漂っている。街路樹の頭の緑が、微かだけれどさわさわと揺れる程度の風が吹いていた。
時折すれ違う人々はどこか別の世界の人のようで、挨拶なんてすることはないし、前方から近づいてくる人がいると無意識に目を逸らして、進路を空けるようにして道の端に避けていく。特に人が苦手なわけではない。だけれど、幼い頃には誰にでも挨拶をしていた自分とは、別の人間になってしまったかのようなバツの悪さを感じずにはいられなかった。
10分ほど歩いていると住宅街の中にひときわ大きな建物が見えてきた。広い敷地を覆う白い塗装のはがれかけているフェンス。青々と茂る木々、街路樹よりも居心地が良いのか急に聞こえだしたセミの声。数年前に塗り替えをしたクリーム色の外装をした3階建ての図書館。
「うおー、空調絶好調じゃん。これは閉館までコースの気配がしてきたぜ」
玄関の自動ドアが開いて、中から飛びだした冷房の効いた心地よい風が一気にかけぬけた。館内は聞いたことのあるような有名なクラシックの曲がオルゴールで流れている。
正面には受付と返却コーナーがあり、1階は懐かしい音楽やクラシックなどのCDが並んだ棚が出迎える。まだ早い時間だから人はあまり居ないけれど、小さな子どもがキッズコーナーで母親と楽しそうに絵本を見ていた。
汗をべったりとかいていたから、若干の温度差による寒さは感じたがすぐにそれは快適へと変貌した。心なしか緩んだ頬、柔らかいカーペットを踏む感触もなんだか気持ちを落ち着かせる。フロアの右手奥には3階まで行き来できる階段があり、オレは二階へと上っていく。踊り場の高い位置にある窓から差し込む木漏れ日。
この図書館では、有名所の文学作品から各種専門書や図鑑だけに留まらず、一葉少ない物のラノベまで取り揃えている所が素晴らしい。さすがにラノベなどに関して言えば一回り、いや二回り半ほど新刊から遅れている。だけど、最新のもので気になった本は家に買ってあるので、図書館にある本はある意味で「購買意欲が沸かなくても、あれば読みたい」ものが幾つかあり、そんな中から掘り出し物を見つけるという楽しさがある。
「この辺は前に来た時に攻めたけど・・・・・・んー、どうやら新しい本は入荷していなさそうだな・・・・・・」
六段作りの本棚が一定の間隔で並んでいる。子どもの頃は4段目を取るのにも階段の近くにある子ども用の脚立を使ったものだけれど、いつのまにか手を伸ばせば最上段まで届く様になっていて成長したものだなと思った。そんなことを考えながら、一昔前に流行った作品を指で追いながら眺めていく。
「うお、『捨てられたブラウン管を直してみたら、異世界リサイクルショップで億万長者になっちゃった』が全巻そろっている。やるなぁ、あなどれん!図書館め」
なんて掘り出し物を見つけた時には、テンションが思わず上がってしまって声に出っちゃったりすることもある。オレははっと口を押えて周りを確認したけれど、どうやら近くに人はいないようで、さっきの独り言は誰にも聞かれていないようだ。
『捨てリサ』シリーズは異世界転生ものの中でも日常系というか、冒険をほとんどしない。その分、村やダンジョン付近に棄てられた資源を、現代の知識を生かしながら再生利用していく物語だ。主人公が普通にショップ経営について試行錯誤している章が面白かったが、億万長者になると急に武具揃えだして、それまでダンジョンもろくに探検していなかったのに魔王退治に行くことになる展開から失速したように思う。そんなこんなで途中からは買わなくなってしまったものの、物語の終着点が気になる一冊の一つだった。「よし、候補入りだ」 と呟いて、捨てリサの4,5,6巻を手に取った。
「異世界転生かぁ・・・・・・本当にそんなことが起こったら楽しいだろうな。オレってゲームもけっこうやり込み派だし、自分でギルド設立したりするのも好きだからイケる口だと思うんだけどな」