あかいろのしずく
それも当たり前のように言うので、私達は自分の耳を疑わずにはいられなかった。どういうこと? 先生がいないって?
『僕はすぐ近くにいるので、ドアを開ければ気づきます』
先生が言ったのは私達を脅すため?
それとも、ドアを“開けなければ気づかない”ということだったの?
いや、違う。
そんな単純な考えじゃない。
そうだとしたらこの近くに先生がいないと言い切れる根拠は、どこにある?
ぽつりと脳裏に落ちた灰色の影は、次第に疑念となり思考をも呑み込んで大きさを増していく。
そうやって私達に疑う気持ちが生まれる中で、サユリさんは一人少年に問う。
「アズマ、なにか知ってるの?」