あかいろのしずく










先生はまず、階段を下りて行った。


すぐ、「うわあ!」と驚いたショウトの声が聞こえてきた。二人は気づいていなかったようだ。私がもっと早く気付いていれば......!



「どうしてあいつがまだ家にいるって分かってた?」



アズマが私を見下ろし、声をひそめて聞く。


そう、最初から先生は、家を出ていなかったんだ。



「電話が家から見つからなかった。たぶん、あの鳴った時に気づいて回収したんだと思う」



私達は出口を探すことに必死だったけれど、助かる方法はそれだけじゃなかった。いつの間にか忘れていたんだ。



電話があれば助けを呼べることを。
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