あかいろのしずく


「できるよ。お前が望むなら、窓なんていくらでも割ってやる。ドアだって破ってやる。あの先生のことも俺がなんとかする」




任せろ、とアズマは優しく笑った。



そのやわらかい笑みに触れて、私はいよいよ気づく。




必要だったのは覚悟だったのだ。
少しでも諦めを感じていたことがダメだったのだ。


クローゼットの扉を、アズマが開けた理由。

それは私が、心のどこかで「無理だ」と思っていたことを、見透かしていたからだったのかもしれない。



だから失敗したんだ。

無理だと思ったから無理だったんだ。
あの時諦めていなければこんなことにはならなかったんだ。



こうなったのは、私のせい、だったんだ。




そう思うと、目の淵から涙が溢れてきて、私は両手で顔を覆った。
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