あかいろのしずく

腕が動かない。

痺れる薬でも混ぜられたんだろうか。俺は、どうしてしまったんだろう。どうして、こんなにも自由な空間に縛られているのだろう。


そうやって考えた時、不思議と答えは彼女にある気がした。
俺は念のため、もう一度だけ聞いてみた。




「何もかも話すんだ。あんたも......捕まるかもしれないんだぞ?」




忠告しているみたいだった。立場は逆転していた。

俺は藤谷の弱みを握ったみたいな気分だった。でも、全然嬉しくなんかなかった。むしろ、悲しみさえ感じた。



俺の問いかけに、今度は藤谷は眉を下げて笑った。俺の中に、その時ふっとある考えが浮かんだ。









藤谷は最初から、俺を監視する気なんてなかったのではないだろうか?






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