あかいろのしずく
手に握っていた携帯は無くなっていたが、胸には銀色の光があった。
俺はそれを握りしめ、安堵の息をつく。
起き上がって部屋の中を見渡せば密室。
なるほどな、本当に誘拐されたわけだ。
苦笑してもう一度横になる。
咄嗟に掴んだ量だ。薬の効果なんてたかが知れている。時間がない。
俺はここから逃げる。じゃないと、あいつが――――ミナトは心配するだろう。
「何もないよ、お前のせいじゃない。これから一緒に頑張ろう」ここを出たらあいつに、今度はそう言ってやるんだ。もう言葉を詰まらせて立ち尽くすようなことはしない。それに。
静かに息を吸って吐きだして、目を閉じる。
絶対に、真実は誰にも教えない。
教える気はない。
何があろうと俺は、ミナトだけは助けるんだ。